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エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年02月29日 

続・諸外国におけるシェールガスの調査・開発動向等

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 マネージャー/加島 健)



1.ますます脚光を浴びるシェールガス

 3.11の東日本大震災に伴う原発事故などを踏まえ、エネルギー政策の基本方針(「安定供給の確保」「環境への適合」「市場原理の活用」)に則ったエネルギー政策の基本的な方向性を示す「エネルギー基本計画」の見直しが、総合資源エネルギー調査会 基本問題委員会(以下、基本問題検討会)を中心に、2012年夏を目処に議論されている。2011年12月末に基本問題検討会が公表した『 新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた論点整理 』では、望ましいエネルギーミックス及びエネルギー政策の改革の方向性として4つの基本的方向を掲げており、そのうちの1つに「天然ガスシフトを始め、環境負荷に最大限配慮しながら、化石燃料を活用すること(化石燃料のクリーン利用)」と明記している。なお、委員からの主な意見として、メタンハイドレードやシェールガス等の非在来型天然ガスや水素利用の拡大の潜在可能性は大きく、中長期的な視点から研究開発等を推進すべきとのコメントがピックアップされている。
地方自治体の動きも活発化しており、東京都では2011年8月に「東京天然ガス発電所プロジェクトチーム」を発足させ、同年9月には、100万キロワット級の天然ガス発電所の建設候補地(適地)を公表した。

 これらの動きの背景には、非在来型天然ガスの1つである「シェールガス」の存在がある。シェールガスの埋蔵量・生産量については、2011年05月31日のトレンドウォッチ:「諸外国におけるシェールガスの調査・開発動向等」にて簡単に触れたので参照いただきたいが、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)が2011年に公表した「World Energy Outlook 2011 Special Report 〜Are we entering a golden age of gas? 〜」では、非在来型天然ガス(Unconventional Natural Gas)を含めた天然ガスの埋蔵量は250年以上※と見積もる(※但し、現在の天然ガス消費量をベースとして算出)。IEAの通年レポート(World Energy Outlook 2011)においても、今後の天然ガス消費量は、次のいずれのシナリオ(Current Policies Scenario / New Politics Scenario / 450 Scenario)においても増加傾向と予測している。

図1:非在来型天然ガスとは

(出典:資源エネルギー庁資料)


 技術開発の進展による掘削の低コスト化の実現及び資源国の旺盛な資源需要に伴う資源価格の高騰等を背景に、非在来型天然ガスの開発は加速している。シェールガス開発の進展は、各国の燃料需給・価格動向に大きな影響を及ぼしている。例えばアメリカでは、米国国内での天然ガスの井戸元価格は原油価格と常に相関して推移していたが、2008年前後から、シェールガス開発等による自国内生産ガス供給量の増加の影響等により、価格水準に乖離が生じている。なお、アメリカは、シェールガス開発に伴う天然ガス生産量の増加により、2009年に世界最大の天然ガス生産国となった。

図2:世界の天然ガス生産量
(単位:Million tonnes oil equivalent)

(出典:Statistical Review of World Energy 2011(BP)をもとに筆者加工)


 シェールガスは、着実に世界のエネルギー需給に影響を及ぼしつつある。裏を返せば、それだけシェールガスが脚光を浴びていると言える。



2.シェールガス埋蔵量上位国・地域における開発動向

 シェールガス開発は、埋蔵量上位国・地域にて着実に進んでいる。

@中国
 技術的に可採可能なシェールガスの埋蔵量が最も多い国と見積もられている中国では、2012年2月に国家エネルギー局が「国家エネルギー科学技術「十二五※」(規画)」(※第12次5カ年計画:2011〜2015年)を発布した。規画は、調査・採掘技術、加工・転化技術、発電・送電配電技術、新エネルギー技術の4つの重点分野に分類しており、調査・採掘技術分野では、複雑な地質の原油・天然ガス資源、石炭・炭層ガス資源総合調査技術を高め、シェールガスなど非在来型天然ガス調査開発中核技術システムと関連設備を形成する。なお、中国は探査資金の投入が不足しているため、国家エネルギー局は「十二五」期間に重点地域の調査開発を推進し、実力のある国外投資者をリスク調査と試験開発に誘致、民間資本の炭層ガス探査開発、備蓄、パイプライン建設への参画を奨励する考えだ。

 中国国内では複数のプロジェクトが動いており、一例としては、中国石油化工集団(シノペック)が、同社勘探開発研究院が英国エジンバラ大学、英国地質調査研究所(British Geological Survey:BGS)と共同実施している四川省西部のシェールガス探査・評価技術プロジェクトなどがある。なお、本プロジェクトは、一定の目処がついたと公表された。


A北米(アメリカ・カナダ)
 北米ではオイルメジャー・石炭メジャーなどのシェールガス開発に向けた活動が活発化している。例えばシェルは、北米にてシェールガス対象のGTL(Gas to Liquid)プロジェクトの検討に入った。また、仏トタルは、米天然ガス開発大手のチェサピーク・エナジー(Chesapeake Energy)がオハイオ州で実施するシェールガス開発事業に出資を表明した。トタルは23億2,000万米ドルを投じ、同事業の権益25%を取得する。

 その他、資源大手BHPビリトンは、米国でのシェールガス開発事業で2012年6月期に約45億米ドルを投資する方針を示した。投資額は、2015年期末には約60億米ドル、2020年6月期末には65億米ドルに増加する見通しとなっている。ノルウェー石油大手スタットオイルも、米独立系石油・ガス開発会社のブリガム・エクスプロレーション(Brigham Exploration)を44億米ドルで買収することを明らかにした。


 日本企業のシェールガス開発への参画も加速している。丸紅は、米石油ガス開発大手であるハントオイルがテキサス州イーグルフォードに保有するシェールオイル・ガスの鉱区権益の35%を取得する。開発費を含めた投資額は約13億米ドルとなっている。また、三菱商事は、カナダの天然ガス大手エンカナとの間で、ブリティッシュコロンビア州でのシェールガス共同開発に合意した。三菱商事は約29億カナダドルを投じ、天然ガス鉱区の権益の4割を取得する。その他、国際石油開発帝籍や日揮もカナダでのシェールガス開発に参画する。




3.シェールガス開発に伴う環境面への懸念

 中国や北米ではシェールガス開発が加速する一方、欧州を中心に、シェールガス開発に係る環境への安全性について、議論が行われている。既にフランスでは、シェールガスを採掘するための技術である水圧破砕法(フラクチャリング)の使用を禁止し(2011年6月末の上院での投票にて採択)、これに伴い、開発許可を取得していた企業(Toreador Resources、Schuepbach Energy LLC、Total、Devon Energy)は事実上採掘できなくなった。また、ブルガリアでは2012年1月、フランスと同様、水圧破砕法によるシェールガス採掘を禁止する決議が議会にて賛成多数で採択された。この決議とほぼ同時期に、ブルガリア政府は、環境への影響を理由に米石油大手シェブロンと交わしたシェールガス田の開発契約を取り消している。

 前述した2011年5月のトレンドウォッチでは、“今後も化石燃料の需要増が確実に見込まれる中で、シェールガスへの期待度は今まで以上に高まり、開発も加速度的に進むことが想定される。同時に、シェールガス開発を進めるうえで遵守すべきガイドラインや法規制等の整備が進むであろう。シェールガス開発動向は、多くの企業に少なからず影響を与えることから、しばらくの間、調査及び開発動向を注視することが重要だ。”と述べた。シェールガス開発は、中国・北米を中心に加速している一方、欧州ではブレーキがかかっており、地域による温度差が大きい。現時点におけるシェールガス採掘に対する各国の対応は、各国のエネルギー構成やエネルギーセキュリティに係る考え方も大きく影響していることが考えられる。

 なお、国際的なガイドラインや法規制等の整備の進捗はお世辞にも順調とは言い難い。

 いずれにせよ、資源国の旺盛な資源需要は中長期的に拡大することが見込まれること、また、急激な再生可能エネルギーへのシフトは困難であることなどから、シェールガスを含む非在来型天然ガスの重要性はより一層高まることが考えられる。

 シェールガス開発動向は、多くの企業に大なり小なり影響を与えることから、今後も、開発・規制関連動向を注視することが重要だ。



▼参考文献
・BP ホームページ
・資源エネルギー庁ホームページ
・経済産業省ホームページ


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