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エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年03月30日 

アフリカにおける、再生可能エネルギーによる地方電化ビジネス

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 シニアコンサルタント/東 信太郎)



1.「アフリカの電化」というビジネスチャンス

 人口9億人を抱えるアフリカは多様な魅力を持つ大陸である。ライオンやゾウ、キリンが闊歩するサバンナに代表されるような豊かな自然環境の宝庫という一面を持ちながら、世界の原油の10%を供給し、マンガンやコバルトなどのレアメタルを豊富に有するという鉱物資源に恵まれた大陸でもある。全世界の約13%に相当する9億人以上の人口を擁し、人口増加率は他の地域をしのぐ。貧困、紛争、汚職などのイメージが先行しているものの、中間層の拡大やBOPビジネスの発展によって、新興市場としても注目を集め始めている。

 とりわけ、中国のインフラ整備事業や資源の獲得、製品の輸出、など官民を挙げたアフリカへの進出は目覚ましい。また、韓国はサムソンやLGなどが携帯電話やテレビ等の家電の販路拡大を狙い、アフリカをターゲットとしたプロモーションを繰り広げている。対して日本はといえば、中古車の輸出により日本車のシェアは大きいものの、その他の分野においては、中国や韓国勢の後塵を拝しているという状況にある。

 アフリカには一つの広大な「ビジネスチャンス」が潜んでいる。それは、電化事業である。アフリカ、とりわけサハラ砂漠以南のサブサハラ・アフリカと呼ばれる国々においては、地方電化率が非常に低くなっている。各国とも、地方電化を大きな政策課題としているが、その進展は遅々としている。一方で、国内外の民間企業の参加による、再生可能エネルギーを活用した地方電化については、大きな期待が寄せられている。

 我が国は、アフリカの低炭素型の成長に貢献すべく、"Lighting Africa(電化支援)、Linking Africa(通信網整備)、Lifting Africa(産業基盤整備)" の頭文字から、3Lを旗印としたプロジェクトを実施している。また、2012年中には、政府から「アフリカ・グリーン成長戦略」が発表される予定である。日本の低炭素型の技術や、環境配慮型の技術・製品を積極的に導入することで、アフリカの経済発展と気候変動問題への対策との両立に貢献することを目指しており、エネルギー部門では、特に再生可能エネルギーの活用による、電化率の向上が目標として掲げられている。2013年には、横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催されることもあり、官民共にアフリカ諸国への関与が高まることが予想される。

図表1
図表1
出典:統計局 ホームページ http://www.stat.go.jp/data/sekai/h4.htm




2.アフリカ諸国の電化状況

 図表2は、開発途上国における、電化状況を示している。アフリカをみると、北アフリカ諸国の電化率は99%程度、地方電化率も98%と非常に高くなっている一方、サハラ砂漠以南の諸国(サブサハラ・アフリカ)については、電化率が低い。特に、地方電化率に関しては、平均すると14%程度であり、10%に満たない国も少なくない。地方電化率については、開発途上国では平均して63%となっており、サブサハラ・アフリカの電化率の低さは際立っている。

図表2:開発途上国の電化状況
図表2
出典:IEA ホームページ http://www.iea.org/weo/electricity.asp


 一方、国連環境計画(UNEP)が発表したレポート「Global trend in renewable energy investment 2011」では、2009年から2010年にかけて、アフリカにおける再生可能エネルギーへの投資が4倍近く伸び、36億ドルに達したことが報告されている。特に、エジプトとケニアにおける伸びが顕著であるが、エジプトでは100メガワットの太陽熱発電プロジェクトと220メガワットの洋上風力発電プロジェクトが実施された。ケニアにおいては、地熱発電を筆頭に、風力発電や小水力発電といったプロジェクトへの投資が増加している。その他、ザンビア、モロッコ、カーボヴェルデ、リビア、スーダン等における投資が目立っている他、南アフリカにおいては、継続的に再生可能エネルギーによる発電プロジェクトが実施されている。

 低い地方電化率と、再生可能エネルギーへの投資拡大。この二つのファクトから導き出されるのは、「再生可能エネルギーを利用した、地方電化ビジネス」という潜在的なビジネスチャンスである。

 サブサハラ・アフリカの地方電化に関しては、コストがかかるナショナルグリッドの延伸ではなく、電力需要に応じてミニ・グリッドを設置する方法が実施されてきた。近年、原油価格の値上がり傾向もあり、再生可能エネルギーによる地方電化に注目が集まっている。もっとも、赤道直下とはいえ、再生可能エネルギーだけで安定的なエネルギーを賄うことはできず、ディーゼル発電と再生可能エネルギーを組み合わせたミニ・グリッドによる地方電化に期待が高まっている。

 また、再生可能エネルギーの導入については、固定価格買取制度(FIT)などの促進策が進められている国もある。例えば、東アフリカのウガンダ、ケニア、タンザニアでは、FITと共に、再生可能エネルギー関連製品等の非課税化といった優遇政策も実施されている。大西洋に浮かぶ島嶼国家カーボヴェルデでは、PPP方式(Public Private Partnership)による再生可能エネルギーの導入が期待されているように、民間企業の参加による電力事業の促進を望む国も多い。国の財政に依存するのではなく、電化事業をビジネスとすることで、地方電化に弾みをつけたい、というのが各国の本音であろう。 




3.再生可能エネルギーによる地方電化ビジネスの可能性

 前節で、サブサハラ・アフリカを中心に「地方電化率の現状」、「再生可能エネルギーへの投資増加」、「ハイブリッド・ミニ・グリッドによる地方電化」、「再生可能エネルギー導入促進策と民間企業参加への期待」といった事項を整理した。こうした背景をビジネスチャンスととらえ、日本が持つ低炭素型発展に寄与する技術や製品の導入を図るためにどうすればよいか、以下にポイントをまとめる。

@ローカライズした、コンポーネント・システムの開発
 例えば太陽光発電の場合、アフリカにおける中国製と日本製の太陽光パネルの調達価格差は2〜3倍に及んでいる。また、地理的な観点から見ると、アフリカはヨーロッパや北米とのつながりが深いエリアである。再生可能エネルギーの導入増加が見込まれるからと言って、無条件に日本の優れた技術や製品が受け入れられるわけではない。日本の強みを結集させ、ローカライズしたコンポーネントやシステムを作ることが必要となる。太陽光発電、風力発電、地熱発電等の技術に加えて、不安定な再生可能エネルギーの制御やハードな環境でも信頼性を担保でき、さらに価格と性能のバランスが取れたアフリカ仕様の地方電化システムを作り出すことが求められている。こうしたシステムは、他のエリア、例えば島嶼部や辺境の無電化地域の電化にも応用することができる。

A現地企業、政府機関との連携と信頼醸成
 PPP方式や、特別目的会社(SPC)の設立によって地方電化ビジネスに参入する場合、現地企業との連携は必須条件となる。また、@とも関連するが、導入した製品やシステムについては、継続的なケアやメンテナンスが必要となる。そういった観点からも、現地企業や、当該国の政府機関との連携と信頼醸成を欠かすことはできない。

Bファイナンスに関する情報収集
 地方電化について、プロジェクトの発注者となるのは現地政府であるが、必要な資金は国際機関や他国からのローンや有償・無償資金援助に負うケースが多い。世界銀行やアフリカ開発銀行は、アフリカの再生可能エネルギーに関する低金利ローンを用意する場合もあり、各国の再生可能エネルギーを対象にした資金援助も継続されるであろう。こうした、ファイナンスに関する情報を収集し、ビジネスを立ち上げるタイミングを計ることも必要である。もちろん、我が国のアフリカ外交や有償資金援助(円借款)などの政策との連動も重要なポイントである。

 サブサハラ・アフリカにおける地方電化の低さをチャンスと捉えれば、日本企業の強みをローカライズすることで、新たなビジネスチャンスを発掘することができる。アフリカの政治環境、ビジネス環境は改善されているものの良好と言えずリスクも大きい。だからこそ、そこには新しいビジネスのフロンティアが広がっているのではないだろうか。アフリカ諸国に携帯電話が急速に普及したように、地方電化をビジネス化することで、そのフロンティアを開拓することができるのである。