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エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年05月31日 

シェールガスは国内エネルギー安定供給確保のための「特効薬」となるのか

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 マネージャー/加島 健)


1.国内エネルギー政策における天然ガス・シェールガスの位置づけ

 2012年2月に寄稿した「続・諸外国におけるシェールガスの調査・開発動向等」にて触れているが、2011年12月末に基本問題検討会が公表した『新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた論点整理』(以下、論点整理)では、望ましいエネルギーミックス及びエネルギー政策の改革の方向性として4つの基本的方向を掲げており、そのうちの1つに「天然ガスシフトを始め、環境負荷に最大限配慮しながら、化石燃料を活用すること(化石燃料のクリーン利用)」と明記している。なお、委員からの主な意見として、メタンハイドレードやシェールガス等の非在来型天然ガスや水素利用の拡大の潜在可能性は大きく、中長期的な視点から研究開発等を推進すべきとのコメントが掲載されている。

 天然ガスシフトを推進していくためには供給基盤(インフラ)の強化が必要となる。供給基盤の強化を検討するうえでは、セキュリティの向上・天然ガス利用可能性の向上・ガス価格低廉化の可能性等、多岐に亘る項目の議論が必要となるため、2012年1月に経済産業省が総合資源エネルギー調査会 総合部会に「天然ガスシフト基盤整備専門委員会」(以下、専門委員会)を設置した。専門委員会では、天然ガスシフトを進めるための基盤整備(広域パイプライン、地下貯蔵等)の目的・視座や基盤整備するうえでの課題の確認、新たな基盤整備のあり方について検討し、2012年6月を目処にとりまとめる予定だ。

 なお、基本問題検討委員会では、2012年5月下旬に「エネルギーミックスの選択肢の原案(中間報告案)」(以下、選択肢原案)として、2030年のエネルギーミックスのイメージ(選択肢)を5案提示した。そのうち選択肢(5)は定量的なイメージが提示されておらず、原子力発電割合が約35%を占める選択肢(4)は除外することになったため、実質3案を原案として取り扱うこととなった。
 3案における火力発電の構成割合は約25%〜35%となっており、2010年度実績(60%)を大きく下回るものの(図表1参照)、天然ガスを燃料とした発電は「LNG」と「天然ガスコジェネ」が該当し、天然ガス発電構成割合は20%〜29%となる。最も天然ガス発電構成割合の高い選択肢(1)の数値は2010年度実績と同じ29%となっているとともに、現行のエネルギー基本計画の構成割合(16%:LNG12%+天然ガスコジェネ4%)を大幅に上回る値となり(図表2参照)、中長期的に見た場合の天然ガスの重要性が高まっているといえる。


図表1:2030年のエネルギーミックスのイメージ(5つの選択肢)
図表1:2030年のエネルギーミックスのイメージ(5つの選択肢)
出典:エネルギーミックスの選択肢の原案について
〜国民に提示するエネルギーミックスの選択肢の策定に向けて〜<中間報告案> をもとに筆者加工



図表2:火力発電の燃料構成(総発電電力量(億kWh)に占める割合)の推計(5月末時点)
図表2:火力発電の燃料構成(総発電電力量(億kWh)に占める割合)の推計(5月末時点)
出典:エネルギーミックスの選択肢の原案について
〜国民に提示するエネルギーミックスの選択肢の策定に向けて〜<中間報告案> をもとに筆者加工



 選択肢原案では、各エネルギー源の中長期的な位置付けの中で化石燃料の有効活用に触れており、天然ガスの利用に関しては、シェールガス革命による天然ガス価格の低下が見込まれること等を根拠とした「大幅な利用拡大を図るべき」という意見がある一方、エネルギー安全保障(国内での災害対応を含む)やコスト等の観点から大きく依存する状況は危険であるため、「利用拡大には限界がある」という意見も出ている。




2.シェールガスの調達(輸入)に係る国内企業の取組状況等

2-1. シェールガスの調達(輸入)に係る国内企業の取組状況

 国内の原子力発電所が2012年5月上旬に全て停止し、短期的には原子力発電所の稼働再開が不透明、中長期的には原子力発電の依存度を低減せざるを得ない中で、国内企業の北米からのシェールガスの調達(輸入)に向けた動きが活発化している。その目的は言わずもがな、安価な天然ガスの取得に尽きる。ここでは2012年4月以降の主な動向を以下に示す。

●住友商事・東京ガス(米国)
 住友商事と東京ガスは米国からシェールガスを調達する協議を米国企業のドミニオンコーブポイントLNG社(以下、ドミニオン社)と開始した。ドミニオン社がメリーランド州のコーブポイントに建設するLNG液化基地から2017年にも年間約230万トンの引き取りを始める。契約期間はLNG液化プラントの運転開始から20年間を予定している。

●三菱商事・三井物産(米国)
 三菱商事と三井物産は、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入をそれぞれ米国企業と共同で2016年末にも開始する方向で検討すると発表した。具体的には年間約400万トンの天然ガスを米LNG事業会社であるキャメロンLNG(カリフォルニア州)に委託して液化し、日本を含む米国外に販売する計画としている。
 
●三菱商事(カナダ)
 三菱商事はシェルカナダ、韓国ガス公社、中国石油天然気の3社と共同で、カナダブリティッシュ・コロンビア州 キティマット港周辺においてLNG輸出基地を共同開発する「LNGカナダ」の構想を公表した。現時点での計画では、2系列(600万トン/系列)の液化設備から成る合計1,200万トンのLNG供給を予定しており、2010年代末の生産開始を目指している。三菱商事の権益比率は20%となる。


2-2. シェールガスの開発・輸出に係る規制

 米国は、2012年4月に米国環境保護庁(EPA)が、天然ガス・石油の採掘に伴い排出される揮発性有機化合物等の有害汚染物質を削減するため、大気浄化法(Clean Air Act)に基づく汚染基準を改定し、2015年から完全施行する。改定は、シェールガス開発による大気汚染防止の側面も有している。
 また、同国と自由貿易協定(FTA)を締結する国・地域以外に天然ガス・LNGを輸出する場合、米政府の許可が必要となるため、2-1.で述べた2つの米国内プロジェクトの成立要件として、輸出許可の取得が必須となる。

 このように、米国におけるシェールガスの開発・輸出には、許認可の取得や新たな規制の遵守等が求められている。今後、開発・輸出規制が強化される可能性も考えられる。
国際的に見ても、シェールガス開発に関して国際エネルギー機関(IEA)がシェールガスなど非従来型の天然ガス開発に関し、周辺環境へ配慮し、地元理解を得ることなどを盛り込んだ規則案を発表した。

 シェールガス開発は規制強化の方向に進んでいることに留意が必要だ。




3.シェールガスは国内エネルギー安定供給確保のための「特効薬」となるのか

 IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)が2011年に公表した「World Energy Outlook 2011 Special Report 〜Are we entering a golden age of gas? 〜」(以下、WEO11SR)では、非在来型天然ガス(Unconventional Natural Gas)を含めた天然ガスの埋蔵量は250年以上※と見積っている(※但し、現在の天然ガス消費量をベースとして算出)。
 北米からのシェールガスの輸入に係る動向も活発化するなど、シェールガスは国内エネルギー安定供給確保のための「特効薬」として期待されている部分もあるかと思われる。

 しかしながら、「開発規制強化の可能性」について十分に留意しなければならない。イギリスのように水圧破砕によるシェールガス探査にゴーサインを出す国もあるものの、2-2.にて述べたとおり、国際的に見ればシェールガス開発は規制強化の方向に進んでいると理解するのが妥当だと考える。例えばシェールガス開発の許認可権者が地震の誘発防止や有害汚染物質の排出等の抑制を「最優先事項」と位置付けた場合、開発事業者側は、事業化の遅延に加え、フランスやブルガリアの事例のように事業そのものの中断が求められる可能性も否定できない。そのようになれば、国内エネルギー安定供給を確保することは非常に困難となる。

 シェールガスは国内エネルギー安定供給確保のための特効薬として活用できるポテンシャルを有している一方、現時点では「開発規制強化の可能性」という副作用があることを十分に意識することが不可欠だ。
 エネルギーミックスの議論にも通じるが、エネルギー自給率4%の我が国が、1つの資源に過度に依存することは非常にリスクが高い。そのことを肝に銘じなければならない。


▼参考文献
・資源エネルギー庁ホームページ
・経済産業省ホームページ
・三菱商事ホームページ
・米国環境保護庁(EPA)ホームページ

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