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エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年06月29日 

バイオ燃料の最新動向 北南米およびアジア諸国の政策と市場動向

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 主任/下田 玲子)


1.バイオ燃料の需要動向 〜生産量推移〜

 昨年の東日本大震災以降、日本国内にとどまらず世界において原子力発電が占めるエネルギー供給構成割合の再編成等が議論されている。原発割合を減少させた場合、不足分を化石燃料で補うには近年の化石燃料価格の上昇という懸念事項や、地球温暖化対策に逆行するCO2排出量の増加という問題が浮かび上がる。そこで、温暖化対策の観点からCO2を殆ど排出しない再生可能エネルギーへの期待がより一層高まっている。
 再生可能エネルギーの一つであるバイオ燃料の生産動向については、2011年11月30日のトレンドウォッチ(バイオ燃料の生産・政策動向について)において、2005年以降の大幅増加が報告されているが、最新の2010年の生産量データを確認してみてもバイオエタノールおよびバイオディーゼルの生産増加の勢いはとどまるところを知らない(図表1、3)。バイオ燃料市場をけん引するメンバーは、欧米および南米に集中していることに変わりはないが、そのランキングに近年動きがみられる。バイオディーゼルについて国別に生産量を見てみると、税制等の影響を受け2009年に生産量を大きく落ち込ませた米国が2010年には1位に、2007年にはトップ5圏外であったアルゼンチンが順調に生産量を増やし2位につけている(図表4)。

図表1:世界のバイオエタノール生産量推移
図表1:世界のバイオエタノール生産量推移


図表2:2010年におけるバイオエタノール生産割合
図表2:2010年におけるバイオエタノール生産割合


図表3:世界のバイオディーゼル生産量推移
図表3:世界のバイオディーゼル生産量推移


図表4:2010年におけるバイオディーゼル生産割合
図表4:2010年におけるバイオディーゼル生産割合

(図表1〜4出典:F.O. Licht社、World Ethanol and Biofuelsを基に作成)
※2010年の値は推定


 各国の政策および市場動向に目を向けると、化石燃料へのバイオ燃料含有義務の施行や輸出税優遇等バイオ燃料の増産を促す施策がある一方で、向かい風となる優遇税の廃止など、国によって状況は様々である。本稿ではこうしたバイオ燃料動向について、最新の各国政策・市場を概観する。



2.バイオ燃料先進国の最新動向

 バイオ燃料先進国のうち、米国および中南米のブラジル、アルゼンチンに関するバイオ燃料政策の最新動向を以下にまとめた。

【米国】
 米国におけるバイオ燃料生産は、バイオ燃料の使用の義務付けや、税制の優遇措置などの支援を受け、増加の一途をたどっていた。2009年に見せたバイオディーゼルの生産量の大幅な落ち込みは、製造業者に対する税制優遇措置の失効、およびEUにおけるに課税措置によるものであり、税額控除の復活や、RFS2(輸送用燃料として使用を義務付けられた再生可能燃料量の基準)による使用義務量の大幅な増加設定を受け、2010年、2011年と徐々にその生産量を戻していった。しかし、当該税制優遇措置は2011年末をもって失効、さらにバイオエタノールに関してもブレンダーに対する税額控除や輸入エタノールに対する関税措置が2011年12月に失効するなど、一度に優遇措置が消え、米国はバイオ燃料生産量のトップから転落する可能性を見せた。しかし、ディーゼルに比べてエタノール業界はすでに成熟しており同税制失効による影響は少ないとの見方もある。現在これら税制については復活の兆しは見られず、残るバイオ燃料優遇策はRFS2のみとなっている。
 政府はバイオ燃料業界に対する税制以外の支援策として、研究開発支援を積極的に取り組んでいる。従来のバイオ燃料の主原料であるトウモロコシやキャッサバ等の食料、飼料等の第一世代に比べ、木や草を由来とする非食料のセルロース系エタノール(第二世代)については特に技術確立のハードルが高く、商業化に向けたプロジェクトがエネルギー省(DOE)および農業省(USDA)支援のもと進められている。RFS2では、2009年以降徐々にその消費量を増やし、2022年までには従来の第一世代バイオ燃料と同量の消費計画を示すなど、この値を見る限りでは第二世代の市場ポテンシャルは非常に大きなものである。また、セルロース系には、製造業者に対する消費税控除措置が取られており、2012年末まで適用とされている。しかし、米国内の商業化プロジェクトの状況からみると本格的な立ち上げは2013年以降であり、実際の生産量とRFS2計画値との間に相当な開きがあること、消費税控除措置の対象となる製造者が殆どいないことなど、セルロース系に対する優遇策は的外れな結果となっている。
 米国は2009年のバイオディーゼル税制優遇措置の失効によって生産量の急速な落ち込みと大量の失職者を生み出している。セルロース系の研究開発にも遅れが目立っており、これらバイオディーゼル業界、セルロース系エタノール業界に対して何らかの対策が必要と考えられる。今後どのような措置がとられるのか、動向に注目が必要だ。

【ブラジル】
 ブラジルは、2013年以降バイオディーゼルの自動車用ディーゼルへの混合率を、現行の5%より引き上げる計画を示している。ブラジルでは2008年にガソリンへのバイオエタノール25%混合を義務づける法規制をスタートさせたが、急激な混合率の引き上げがバイオエタノールの品不足と価格の高騰を引き起こしたため、昨年4月、混合率を18〜25%と幅をもたせる改正を、10月には上限を20%とする改正を段階的に行ったという経緯がある。これよりバイオディーゼルの混合率の数値については、エタノールの反省を踏まえて大幅な引き上げは行われないとみられる。日本の農林水産省のレポートによると具体的な数値として7%を検討しているとの報告もある。
 バイオエタノール25%混合義務の法規制がスタートして品不足に陥った際、米国からエタノールを大量輸入して対応していたが、現在、ブラジル国内の需給は落ち着きを見せている。今後は米国への輸出体制を整えていく方針である。

【アルゼンチン】
 ここ数年、大幅な成長を見せているアルゼンチンのバイオディーゼル生産量は、国外需要(主に欧州)の成長に影響を受けたものであった。2010年に国内自動車用軽油燃料へ5%の添加を義務付ける政策が開始されたため、国内消費が増加したことも要因となっている。2006年に発効しているバイオ燃料の生産、持続的消費を振興・制定するためのバイオ燃料振興法は2021年まで有効であり、生産は引き続き好調が見込まれる。



3.アジア諸国の最新動向

 欧米、ブラジル、アルゼンチンがバイオ燃料市場を主導するなか、アジア諸国の動きも活発化の様相を示している。生産量は前述の主要国に届かないものの、特にエネルギー自給率の低い国にとって国内需要の拡大は重要であり、これに向けた各種政策に近年動きがみられた国について以下にまとめる。

【インドネシア】
 インドネシアでは、バイオディーゼル混合率の引き上げを開始することで国内需要をけん引している。本年2月、石油燃料に対するバイオディーゼル混合率が従来の5%から7.5%に引き上げられた。この影響を受け、1〜5月のバイオディーゼル生産量は前年比85%増になるなど、大幅な増産化の動きを見せた。7月からは鉱物・石炭産業に対して混合率2%の石油燃料の利用を義務付けるため、今後はさらに生産増加に拍車がかかるであろう。本年度の国内消費量は10万キロリットル増加すると見込まれている。
【ベトナム】
 ベトナムは、来年12月より首都を含めた7省市部を走行する自動車やバイクの燃料に対するバイオ燃料の混合を義務付けする見込みである。義務化はE5(エタノール5%混合)に始まり、2015年6月にはE10(エタノール10%混合)に混合率を引き上げ、2016年末には全国に導入する計画である。しかし、政府がバイオ燃料の使用を推進する一方で、消費者の購入は進んでいない。理由に、発火に対する不安が伺える。政府は安全性を消費者に説いた上で普及活動を進める必要がありそうだ。
【フィリピン】
 フィリピンではバイオ燃料法(2007年)が発効され、同年5月から軽油にバイオディーゼルの混合(2%混合)を義務づけられている。2011年からは自動車用ガソリンにバイオエタノールの10%の混入を義務付けており、食品大手がバイオ燃料生産事業に乗り出すなど参入企業が増えている。日本からも日揮と伊藤忠が共同で参入。本年より生産を開始している。
【韓国】
 韓国では、教育科学技術部が先進的バイオマス研究開発基盤の形成を目指した施策を2010年に始動しており、燃料・素材転換技術などの研究開発を急いでいる。バイオ燃料に関する特許数は京都議定書や本施策の影響を受けて年々増加しており、2007年以前には年に10件程度であった出願数が2011年には60件以上と急増した。特に国内の大学・政府・関連研究機関の出願数が大きく増加している。

 このように、バイオ燃料の普及施策が着々と進められている海外に比べ、日本のバイオ燃料の普及に目を向けると、京都議定書の目標達成に向けE3(エタノール3%含有ガソリン)の販売を開始したものの、需要は伸び悩んだ。生産については、広大な面積をもたない日本国内では、原料の作付面積が限られるため、海外での生産や、他原料よりも所要面積の少ない藻類由来バイオエタノールのプロジェクトが進められているが、いずれも研究開発段階のものがほとんどである。藻類は成長が速く単位面積当たりの収量が多いため、国土の狭い日本にとって大きな可能性を持つと考えられるが、米国ではすでにDOEが官民一体となった取り組みによって藻類バイオ燃料の商業化に向けて助成金を出して積極的に支援を行っている。さらには、巨大資本を持つ企業も積極的に研究開発に取り組んでおり、日本はすでに遅れをとっている。
 日本国内のバイオ燃料需要を増加させるためにはE3の普及の推進が、日本国内のバイオ燃料生産量を増加させるためには日本の藻類バイオエタノールの商業化を推進させることが重要課題と考えられる。


▼参考文献
・EPAホームページ
・IEA「World Energy Outlook」
・EIA 「Annual Energy Outlook 2012」
・GBEP(Global Bioenergy Partnership)ホームページ
・JETROホームページ
・アルゼンチン再生可能燃料協会(CADER)ホームページ
・農林水産省ホームページ

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