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エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年08月31日 

データセンターの省エネ性能指標に関する動向

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 マネージャー/吉識 宗佳)



 アウトソーシングやクラウドサービス需要への対応等から、昨今データセンターの役割が増大している。IDC Japan (2012) によると、日本国内におけるデータセンターへの投資額は、2011年度実績で3010億円、2016年までの年平均成長率は2.6%と予測されている。

 データセンターの役割が増大している分野の一例として、スマートコミュニティやエネルギーマネジメントシステムの分野を挙げることができる。スマートコミュニティでは、エネルギーの使用状況をはじめとする情報を集約、分析・可視化したうえで、無駄を排除した最適な形に制御をおこなっていくことが目指されている。また、分散した再生可能エネルギーからのエネルギー供給とエネルギーの需要を調節する役割も必要とされている。このような機能を果たすためには、データセンターにおける膨大かつ高度なデータ処理が必要とされる。 実際、各社が既に家庭、オフィスビル、工場などに向けて展開を始めているエネルギーマネジメントシステムをみると、その多くがデータセンターへのデータ集約をおこなう、クラウド型のサービスとなっている。

 このように社会全体のスマート化(効率化)を進めるうえでデータセンターが不可欠な役割を担っている一方で、データセンター自体が消費するエネルギー自体にも注意がはらわれてきた。2007年に発表された米国環境保護庁のレポートでは、2001年から2005年にデータセンターのエネルギー消費量が倍増し、2005年から2010年にかけてさらに倍増すると予測されていた。最近の研究(Koomey, 2011) によると、データセンターの消費エネルギーは、仮想化の導入などの理由により、予測された倍増よりは増加のペースが落ちている。しかし、データセンターの電力消費量は、世界全体で、2010年には2005年比56%の消費電力増となっている。2010年時点で、データセンターは世界全体の電力消費全体の約1.1〜1.5%を占めると試算されている。




 データセンターのエネルギー消費量増加は、エネルギーコスト増加にもつながる。また、日本においては、東日本大震災後の電力不足に対応する必要も生じてきた。このため、データセンターにおける省エネルギーやグリーン化の取り組みが進められ、それに貢献するソリューションが多数登場している。

 データセンターのエネルギー消費は、大きく分類すると、(1) エネルギー調達、(2) データセンターファシリティ(付帯設備)によるエネルギー消費、(3) IT機器によるエネルギー消費の3つのプロセスに分類することができる。3つ全てのプロセスに、データセンターの省エネルギー促進/グリーン化を進めるソリューションが存在する。

 まず、「(1) エネルギー調達」時のグリーン化としては、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入等があげられる。

 次に、「(2) データセンターファシリティ」としては、空調、電源、照明等があげられる。データセンターでは、熱を放出するIT機器を冷やすために必要な空調や、IT機器に電力を供給する電源設備がファシリティのエネルギー消費の大きい割合を占める。

 空調における省エネルギーの取り組みとしては、まず運用面で、サーバー室内の温度分布をセンサーやシミュレーションによって可視化・分析したうえで最適な運転条件を設定する、サーバー室内の冷気と排気の流れの無駄を排除するなどの取り組みが行われている。また、高効率の空調への更新に加え、最新のデータセンターでは、外気を直接取り入れてIT機器を冷却する設備が導入されたり、データセンター自体をコンテナ型にすることで付帯設備の効率化が図られている。一方、電力供給における新しい技術としては、直流と交流の変換を除くことにより電力損失を削減した直流給電装置等をあげることができる。

 また、「(3) IT機器によるエネルギー消費」の省エネルギーとして、省エネ型のIT機器や稼働上限温度を向上させたIT機器が登場している。省エネ型のIT機器を採用すれば直接的にIT機器が消費するエネルギーを削減することができるほか、高い温度で稼働することが可能なサーバーを用いれば、空調の設定温度をあげることができ、エネルギー消費量を抑制することが可能となる。また、サーバーの仮想化やデータセンター全体のネットワーク機器を自動調整することによる省エネルギー技術も登場している。

 このように、データセンターの省エネルギーを進めるソリューションは、(1) エネルギー調達、(2) データセンターファシリティ、(3) IT機器の全分野に渡る。また、前述の米国環境保護庁のレポートによると、データセンターファシリティが消費するエネルギーとIT機器が消費するエネルギーはほぼ同程度の量である。したがって、データセンターの省エネは、データセンターファシリティとIT機器のどちらかだけで促進すればよいのではなく、エネルギー調達のグリーン化も含めた全分野で効率化を進めていくことが重要と言える。




 データセンターの省エネを進めていくうえでは、目標設定や実績の推移追跡をおこなうための指標が必要となってくる。現在世界で最も普及している省エネ性能指標は、グリーングリッドによって提唱された Power Usage Effectiveness (PUE) である。

 PUEは、データセンター全体で消費するエネルギー量とIT機器が消費するエネルギー量の比と定義される。データセンターの役割はIT機器を稼働させることであるので、本来IT機器の消費エネルギーのみ (PUE=1.0) となるのが理想である。しかし実際にはIT機器が稼働する環境(気温等)を保つために、空調や電源供給のエネルギーが使用される。この程度を数値化したものがPUEである。PUEの平均的な値は1.8〜1.9程度であるのに対し、先進的なデータセンターの中にはPUE = 1.1に近い値を主張するところが登場してきている。PUEが普及したことによりデータセンターの省エネ性能が可視化され、取り組みが加速されていると考えられる。

 一方で、PUEの指標の対象は、(1) エネルギー調達、(2) データセンターファシリティ、(3) IT機器のうち、(2) データセンターファシリティに限られる。例えば省エネ型のサーバーをデータセンターで全面的に導入した場合、PUEの分母にあたるIT機器が消費するエネルギー量が減少し、PUEの値は改善しない(PUE=1 に近づかない)。このため、前述の(1) 〜 (3) の全分野の効率化の努力を評価・促進するためには、PUEに加えて新たな指標が必要となってくる。

 日本では、「グリーンIT推進協議会」が、(2) データセンターファシリティのエネルギー効率に加え、(1) グリーンエネルギーの利用と (3) IT機器の生産性を包含した総合的な指標として、DPPE(Datacenter Performance Per Energy)の提案を行っている。データセンター内に設置されるIT機器の省エネとして、(i) 省エネ性能の高い機器の開発・導入(メーカーの努力)、(ii) IT機器を導入した利用者が効果的に機器を稼働させること(利用者の努力)、また、ファシリティの省エネとグリーンエネルギーの利用として、それぞれ、(iii) 省エネ性能の高い設備によって冷却、給電すること(設備供給者の努力)、(iv) CO2を排出しない太陽光発電や風力発電を用いCO2排出量を削減すること、という4つの主体の努力が指標化されている。

 データセンターの省エネに関しては、国際的な標準化の検討がはじまっている。既に2011年11月に、グリーンデータセンターのベストプラクティスがITU−T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)の勧告となっている。さらに、ISO/IEC JTC1に設置されたSC39(Sustainability for and by Information Technology)では、データセンターのエネルギー効率指標が検討されることとなっている。

 また、これに先んじて、グリーングリッドとグリーンIT推進協議会を含む日米欧の官民によって、データセンターの省エネ性能指標の国際協調を目的とした検討が2008年度から進められてきた。日本からはDPPEが提案され、議論が進められている。既に発表されている合意文章の中でも、期待される成果として、PUEが対象とするファシリティの省エネに加え、IT機器の生産性と再生可能エネルギーを表す指標が挙げられている。今後の国際的な標準化においても、データセンターファシリティの省エネに加え、IT機器の生産性やグリーンエネルギーの利用等を考慮した指標が議論されていくと考えられる。