<%@ include file="/content/common/header_top_2010.jsp"%>

トップページ >  トレンドウォッチ一覧  >  地方電化ビジネ・・・

エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年10月31日 

地方電化ビジネス 事始め - 陸の孤島・海の孤島と再生可能エネルギー -

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 シニアコンサルタント/東 信太郎)


1.地方電化とは?

 「地方電化」とは何か? 本稿では、「地方電化」を「その国や地域の基幹電力網であるナショナルグリッドを延伸させるのではなく、独立型電源・グリッドなどにより電化すること」と定義したい。日本国内では、いわゆる「地方」とされるエリアにおいても、ナショナルグリッドが到達していることが多い。日本における「地方電化」の例として、九州や沖縄の離島における電化や、山小屋等の僻地にある施設の電化をイメージしていただければ分かりやすいだろう。離島地域においては、主にディーゼル発電機などから、島内の送電線を通じて公共施設、商業施設、一般家庭などに電力が供給されている。山小屋では、自家発電機によって施設内に必要な電力が賄われている。極端にいえば、「陸の孤島、海の孤島に、電力を供給すること」が、本稿でテーマとする地方電化である。

 日本に限らず、世界を見ても「地方電化」には共通の問題が存在している。それは、遠隔地にあるが故の、高コスト体質である。発電機や送電線を導入する初期段階において、運搬コストはのしかかってくる。必要機材だけでなく、据え付けに必要な機器や、専門知識を有する技術者やエンジニアも都市部からやってくる。
施設が完成した後には、メンテナンスコストが立ち現れる。産業が集積している都市や、輸入港などから地方へ発電機の燃料となるディーゼルを運搬するためには、タンクローリーや、船舶を手配しなくてはならない。大陸などの場合は、地方へいけばそれだけ、道路などのインフラも貧弱であり、苦労して手に入れる燃料のコストはかさむ一方である。発電機や送電線に不具合が生じた場合、部品と技術者は都市から手配されることになり、都市部と比較すると、メンテナンスコストが膨れ上がってしまう。

 こうした問題を抱える地方電化の改善策として期待されているのが、再生可能エネルギーの導入である。さすがに、再生可能エネルギーだけで電力需要を賄うというのは、現段階では非現実的である。しかし、再生可能エネルギーを効果的に取り入れることによって、メイン電源であるディーゼル発電機のランニングコストを減らそうとする取り組みが広がろうとしている。



2.日本の取り組み

 日本では、九州電力と沖縄電力が離島における独立型グリッドに、再生可能エネルギーを取り入れようとする実験を実施している。「電力コストが高くなりがちな、ディーゼル発電などに依存している離島の独立型グリッドに、再生可能エネルギーを導入する」、これはストーリーとしては分かりやすく、化石燃料の削減は温室効果ガスの削減にもなるために、多くの人々の賛同を得ることができそうだが、問題も多々ある。天候に左右される再生可能エネルギーの不安定な出力の制御、太陽光発電設備や風力発電設備の高額な初期投資費用などが、大きな障壁となっている。

 九州電力では、ディーゼル発電による独立型グリッドによって電力が供給されている鹿児島県の離島6島に太陽光発電設備を中心とした再生可能エネルギーを導入し、2010年から2013年にかけて、実証実験を行っている。太陽光発電設備の出力は、最大で60kW、多くは10kW前後と大規模ではないものの、日中に太陽光発電によって発電された電力の余剰分を蓄電池に充電し夜間に利用する実験や、自然エネルギーの課題である天候による出力変動の制御実験を実施している。

http://www.kyuden.co.jp/press_h100420-1.html

 沖縄電力では、グリッドの規模の異なる4島において、既存の独立型グリッドに再生可能エネルギーを大規模に導入する実証実験が行われている。最大の宮古島では、既存の50,000kWの独立型グリッドに、4,000kWの太陽光発電施設と、ナトリウム硫黄電池(NAS電池)、リチウムイオン電池が導入されている。最小の北大東島では、860kWの独立型グリッドに100kWの太陽光発電施設と、リチウムイオンキャパシタが導入されている。宮古島では、いわゆるメガクラスの太陽光発電パネルが導入されているが、それ以外の島は100kW〜200kWクラスの太陽光発電施設となっている。
 この実証実験は2009年から2013年まで行われる予定となっており、不安定な太陽光発電を独立型系統に導入するために必要な技術について、研究が進められている。

http://www.okiden.co.jp/environment/report2012/sec7/sec74.html

 こうした取り組みの背景にあるのは「離島エリアの独立型グリッドのコストを削減するために、再生可能エネルギーを導入する」というシナリオである。一方、「再生可能エネルギーによる出力の安定」と「コスト」が、こうしたシナリオの阻害要因となっている。再生可能エネルギーによる化石燃料使用量の削減への期待と、阻害要因への技術的な挑戦、これは地方電化についての、世界共通のテーマとなっている。
九州電力や沖縄電力の取り組みは、地方電化に再生可能エネルギーを活用するためには欠かせない技術の実証であり、日本企業が地方電化ビジネスにチャレンジする場合の、「強み」となるものである。



3.地方電化ビジネスの分類



 地方電化をビジネスとして考える際、導入する再生可能エネルギーの規模に合わせて、次の4つのタイプに分類することができる。

 一つ目は、メガワット以上のプロジェクト。10メガワットを超えてくると、規模の経済性が働いてくることもあり、再生可能エネルギービジネスにおいては、もっとも「おいしい」分野である。再生可能エネルギーを利用する条件の良い地域、例えば平地で日照率が高く気温上昇が少ないために太陽光発電に向くエリア、一年を通じて風力発電に適した安定した風量を確保できるエリアなどでは、大規模の再生可能性エネルギーのプロジェクトが実施されている。

 二つ目が、地方電化の本命といえる規模である。このサイズの再生可能エネルギーと、ディーゼル発電機の組み合わせによって、地方における発電コストをいかに削減できるかが、世界の「陸の孤島、海の孤島」にとっての大きな課題となっている。再生可能エネルギーを最大限に利用するには、高性能な蓄電池や制御装置が必要だか、その導入コストは高い。蓄電池を使用せず、ディーゼル発電と再生可能エネルギーの比率を7:3程度にしたシステムが、現状における地方電化のベストミックスのようだが、改善の余地はあると考えられる。

 三つ目は、村落規模のコミュニティーレベルの地方電化である。このレベルになると、既存の電力会社が発電機や送電線をメンテナンスするというよりも、コミュニティー全体でマイクログリッドを維持・運営するようなイメージとなる。例えば、水力発電によって安定的な電力を手に入れ、コミュニティーで使用する以外の余剰電力を活用して携帯電話の充電や、冷蔵庫を使った飲料水の販売などの小さなビジネスを行う、あるいは余剰電力を売電することで、維持・運営費をねん出するといった、自立型の電化モデルを想定することができる。

 四つ目は、家単位の電化である。先進国においては、コストを度外視すると家庭で使用する電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことも不可能ではないが、新興国や開発途上国では一般的ではない。むしろ、煮炊きやあかりとりとして使用される、灯油やケロシンなどの化石燃料や、薪や炭などのバイオマス燃料を代替するための、ソーラーランプやソーラークッカーなどの普及を進めるといビジネスとなろう。ここでの問題はコストである。灯油やケロシン、薪や炭を購入する費用で代替できるコスト感の製品が求められる。具体的には、高くても数十ドルレベルの製品を、地方エリアに流通させるコストまで見越して開発する必要がある。

 地方電化という観点からみれば、二点目、三点目がボリュームゾーンである。現状では、地元の施工業者が、感覚的にソーラーパネルとインバーターなどを組み合わせて、システムを構築しており、コストも割高になっている。独立型グリッドにおける1MW〜数百kWの規模の再生可能エネルギーに的を絞り、リーズナブルなシステムを開発することができれば、世界の「陸の孤島、海の孤島」に導入することができる。全世界には、14億人の人々が、電化されていないエリアに住んでいるといわれる。地方電化には、こうした広大なフィールドが広がっているのだ。

 九州電力や沖縄電力による離島における再生可能エネルギーの実証実験は、こうした巨大な地方電化ビジネスにつながっている、「希望の星」だといえるのではないだろうか。