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エコロジーエクスプレストレンドウォッチ
2012年11月30日 

企業のレジリエンスを示す気候変動情報開示パフォーマンス

(NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティング本部 シニアスペシャリスト/大塚 俊和)


 本年10月30日、カーボンディスクロージャープロジェクト(CDP)2012ジャパン500の評価結果が公表された。本年から、各企業の評価スコアの公表のみではなく、気候変動情報開示における先進企業Carbon Disclosure Leadership Index(CDLI)の選定が実施され、下記のとおり、回答社数233社中、上位10%の22社が選定された。



(注1)CDLIスコア:CDP事務局が企業へ送付する気候変動に関わる質問書への情報開示度を100点満点で評価したもの。

 CDPジャパンにおいてスコアリングが開始されてから3回目となる今回の結果からは、自動車/飲料/海運/建設/情報/素材など、我が国の基幹産業におけるそれぞれの業界内での熾烈なスコア争いがはっきりと見てとれる。
 企業がCDPのスコアの高評価獲得を目指す理由には、CDPのスコアが企業のレジリエンス(=立ち直る力)を示す指標として、高い信頼性があると投資家などから評価され始めたことによると考えられる。



 英国のシンクタンク“SustainAbility”が2012年9月に公表した、“Rate the Raters 2012”は、世界における企業の持続可能性を評価・格付けする取り組みの中から、評価手法が確立されている18の取り組みを選定し、評価・格付けの信頼性について850人の企業担当者、投資家、アナリストなどへアンケート調査を実施した結果を報告している。“Rate the Raters”は、2010年においても実施されているが、前回の結果と比較すると、ランクキングにおいて大きな変化が見られ、前回最も信頼性が高いと評価されたDJSIを抑えて、CDPが圧倒的に信頼性の高い取り組みとして評価されている。(下表参照)



 CDPが急速に台頭してきた要因は、主に以下の3つが想定される。

(要因その1)評価の透明性が高い
 CDPは、質問項目単位の配点や得点するための指針(ガイダンス)を詳細に規定し公開している。他方、FTSEやDJSIなどの評価基準はブラックボックスとなっており、情報を開示する企業としては、自社の評価がどのようなプロセスにおいて行われているのかよく分からないのが実態である。こうした情報開示を要求する側の一方的な姿勢は、情報を活用する投資家から企業とのコミュニケーションが上手く図れていない取り組みであると映り始めている。

(要因その2)投資家の欲する情報の開示を要求している
 投資家は、企業におけるガバナンスやリスク情報を最も欲している。気候変動情報に特化して見る限り、CDPやFTSE4Goodでは、ガバナンスやリスク情報の開示が要求されているが、DJSIや日経環境経営度調査では要求されていない。(下図参照)



 また、投資家の欲するリスク情報とは、単にリスクを書き並べるだけでなく、個々のリスクに対してどのような対応策を講じているのか、さらには誰がリスク対応の責任を負っているのかなどを明確に開示することを求めている。こうした、リスクマネジメントの詳細に関する情報開示を求めているのはCDPのみである。

(要因その3)CDPの評価スコアと財務パフォーマンスに相関がみられる
 世界の時価総額上位500社を調査対象とするCDP Global 500レポート2012において、CDLIに選定された企業の収益率が、過去5年間において、調査対象となった企業の平均値の約2倍であったと報告している。特に、リーマンショック後の財務パフォーマンスは、明らかにCDLIに選定された企業の方が急速に回復している。現状、因果関係については不明ではあるが、「気候変動情報の開示パフォーマンスの高い企業は、財務パフォーマンスも高い」という相関があるのは事実である。
 投資家は、企業の財務パフォーマンスはもちろんだが、企業が一旦苦境に追い込まれた際の立ち直る力(レジリエンス)を測ることができる指標を求めており、財務パフォーマンスとの相関を示すCDPのスコアは、企業のレジリエンスを表す指標として評価され始めている。



 気候変動情報の開示パフォーマンスと財務パフォーマンスの相関については、「そもそも企業に体力があるから情報開示に人も金も費やせるのだ」という見解も当然のごとくある。しかし、気候変動に関する情報開示パフォーマンスの高い企業は、その他のすべての領域においてもリスクマネジメントに優れており、有事において非常に強い耐力を発揮するとも考えられる。
 社内における個々の事業を「柱」に例えるならば、情報開示パフォーマンス(=リスク対応力)は柱をつなぐ「梁(はり)」としての役割を果たしており、情報開示パフォーマンスを向上させることは、企業のレジリエンスを鍛える結果となっていると言えるのではないか。(下図参照)



 CDP2012ジャパン500において、非常に高いスコアを獲得しているパナソニックやソニーは、現在、財務的に厳しい状況に置かれている。上記の仮説が正しければ、両社はレジリエンスを発揮し、急速に業績を回復するはずである。